2011年 12月 26日
竹谷さんのBTBを読んで思ったこと
この方のヒルクライムの理論は、今年になって自転車雑誌に次々に取り上げられ、私もどんなものかと試してみたら、確かにこれは楽だなと感じた。つまり、上り坂になったら重心を前に持っていく、そのためにサドルの前の方に腰を移動するという考え方である。おかげで、私はサドルで悩むことになってしまった。というのは、その頃使っていたサドルだと急勾配の坂で前に座ろうとすると、腰が後ろにすべり落ちてしまうからだ。ああだこうだといろいろと迷って、現在とりあえずprologo nagoを使っている。
その方の理論を総括的に展開した本が出たというので、前から少し気になっていた。買ってみたらビックリ。あまりにも丁寧に、明解に、理論的に、体系的に、かゆいところに手が届くように書いてあったからだ。心技体から始まり、フォーム/ペダリング、ペダリングドリル、コーナリングフォーム、トレーニングの運動生理学的基礎、ゾーントレーニング、そして12週間に及ぶ各種レーニングプランの組み立て例(ヒルクライム/長距離ロードレース)、レース別トレーニングアレンジ(ロードレース((長距離・短距離))、クリテリウム、エンデューロ、ヒルクライム等)、筋トレのバリエーション等。
【57頁】
ただ、そのすべてが議論の余地のない正論だとは言いきれない点があるのも事実である。例えば、ペダリングに際して有効な力は0時~6時の間にかかり、それ以降はリカバリーに過ぎないという主張がある。「引き足で引っ張る力はかけず下向きの重力をかからないよう抜くというイメージだ(抜重)」と書いている。現在のオーソドックスな考え方では、引き足で漕ぐことが推奨されている。少なくとも、初中級者対象の手引きにはそう書いてあることが多い。こ~ぢ倶楽部でもそう教えている。その点、真っ向から対立するが、youtubeに載っている竹谷さんのペダリングを見ると非常にスムースである。竹谷さんはスリッパを履いて綺麗にペダルを回していた。つまり、引っ張り上げなくてもペダルは丸く回るんですよということを、これ以上ないやり方でアピールしているわけだ。ま、誰がやってもうまくできるというものではないのは勿論だが、こういうやり方もあるのかいな?、とは思わされた。
【49頁】
また、腰を立てることにも反対している。文面では「骨盤を立てる、寝かす、どちらも過度に行うと骨盤の安定を失い、腰椎、腰筋へのストレスとなり、ヘルニアなど重大なトラブルを引き起こしかねない」としていて、「過度に」立てることだけ否定しているように見えるが、添えられている写真を見れば、一般的に良いと評価されることの多いフォームを「過度」に腰を立てているとして否定しているのは明白である。「過度に」腰を寝かしているとされているのは、名指しされていないが『やまめ理論』であろうか。
【59頁】
また、サドルの高さも一般的に推奨される場合よりも随分高いように見える。写真を見ると、下死点で足首が伸びている。普通はその位置では靴の底が水平になるのが良いとされているように思う。人によって多少の違いはあるだろうが、この伸び方は相当なものだと思う。普通のレッスンでこういう漕ぎ方をしている人がいたら、即、直されるのではないか。ただ、竹谷さんのペダリング理論では「足首はパワーストローク(前半部分)で瞬間的に安定させ、それ以外は力を抜く」となっているので、この位の高さがちょうど力を出しやすいのだろう。
後書きで竹谷さんは書いている。竹谷さんも元々は「モーターのように一回転の間じゅう、ずっとムラなく力をかけるペダリングを意識して」いたのだという。ところが、1999年に来日したMTB世界チャンピョンのペダリングを見て考えが変わった。世界チャンピョンは「ペダルにドンと爆発的に力をかけて、それ以降はチュルっと勝手に回ってくるように漕いでいるよう」に見えたのだという。その発見がブレークスルーになった。そのペダリングを練習することにより竹谷さんはオリンピック代表選考会で勝ち、全日本選手権も取ることが出来た。その「ブレイクスルーをぜひ多くの方々にも体験してもらいたい」という気持ちから、この本を書いたのだという。
まあ、何にでも流派があるんだなあ、それも幾つも・・・というのが私の正直な感想だ。それぞれを代表する方々はアマチュアの初心者からすれば大変な方々ばかりで、どの方の理論が正しくて他のものが間違っているなどと、言うことは出来ない。結局、好きなやり方でやればいいんじゃない?ってことしかないのだろう。
ただ、竹谷さんの本を読んで改めて思ったのは、引き足より踏み足の方がペダリングの推進力になることは否定できないということ。これはローラー台に乗ってみれすぐ分かる。三本ローラーでも固定ローラーでも、上半身を立て引き足だけで漕ぐと重くてたまらないギアが、上半身を前に折り曲げ手をハンドルにそえるようにすると軽々と回るようになる。もちろん、踏み足に力を込めなくてそうなる。これはどういうことかというと、上半身を立てて引き足を使ったいるときは有効に利用できていない上半身の重みが、上半身を前に折り曲げることにより脚にかかり、力を込めなくても推進力に変わるということなのだろう。それは、上半身を折り曲げた状態でも、ハンドルにかけていた体重を体幹だけで支えようとすると、同じように感じることが出来る。引き足には、足を引き上げる筋力しかないのだから、上半身の重みが勝手に掛かる踏み足にかなうはずがない。しかも、引き足の力の多くは十数㎏の自分の重みを引き上げるために使われるのだ。推進力はあまり残っていない。
ただ、だからと言って、踏み足中心で考えればうまくペダリングが出きるのかと言うと、そういう訳でもないのだろうなと思う。特に、私のような初心者はそれだとうまく行かないと思っている。というのは、私のような下手くそは踏み足中心に意識すると、引き足のスピードが間に合わなくて踏み足の邪魔をしてしまう。引き足は踏み足よりも速く回すように意識しないといけないと感じている。とすると、意識としては、踏み足よりは引き足中心。踏み足は重力にお任せして自分では意識しない。そして、それにプラスして、上死点で前にペダルを押しこむことができると良いんだろうなと思っている。なかなか上手くできないのだけれども。回すペダリングのZEROさんに教えてもらえればいいのだけど。
う~ん、なんか判った気になってきましたよ。でも実践は難しいですね^^
拙も上死点を素早く滑らかに越えようとすると引き足意識の方が楽に出来ます。
しかし持続性を考えると踏んだり引いたりを切り変えながらが一番かなと最近は実行しています。
そうですねー。私もあの号は驚きました。全然違う(対立する)理論が隣り合わせに載っていたので、何じゃこれは?と思いました。
緩斜面から中斜面は増田方式でもいけるけど、風布からの釜伏峠のような急斜面になったら不可能、竹谷さんのやり方が合理的だなと私は思いました。
すごい。下ハンダンシングですか。私の場合はダンシングは上ハンだけです。
私にとってダンシングの利用価値はシッティングがキツい劇坂を登るときにあるんです。下ハンを持つと腰が後ろに下がって却ってキツさを増幅させてしまうので有功ではないと思っています。
長いコースの中に短い登りがあるというような場合には有効なのでしょうが、私の場合、そういうことはほとんどありませんし、あったとしてもそういうことをするだけの元気もないですねー。若い人が羨ましい。
私は銀輪乗士さんは踏み足の名人だと思っていたのですが、違いましたか?もちろん、引き足を有効に使っているのは知っていますが、踏み足の推進力を非常に有効に使っていて羨ましいなあと思っていました。
多分、銀輪乗士さんのレベルは、初中級者向けの手引きやレッスンを問題にしない水準まで行っていると思います。
回すように心がけていますが、気が付くと踏んでいますね(^^ゞ
どんな競技も理論は沢山ありますが、どれが正解かはそれぞれの年齢、性別、体型、筋力、柔軟性、等で違ってきますから
自分にあった方法を見つけられるのが一番ですね^^
名ざしして済みません。でも、爆速の走りを見ていると、脚力があるだけではなくペダリング技術も相当なものなんだよなと思わされますよ。
おっしゃる通り、何が正しいかは人によるんですね。自分の正解をみつけて楽しみたいものです。
私はYASUさんとご一緒する前に参加したとき(7月だったかな)、下ハンダンシングをチラッと教えてもらいました。でも、キツくてキツくて、長い坂を登るとき使える技術じゃないなと思いました。特に私のような年寄りだと体力が持たないです。
上ハンダンシングは良いなあと思って、以前よりずっと長い距離やるようになりましたが、この前AKVのポタリングでやっていたら、ZEROさんに軽~く抜かれて置いていかれました。やはり体力が一番ですね。