「グラン・トリノ」
隣家の人たちを救うために彼の実行した計画に驚く。究極の無償の愛。すごい。
深い余韻にひたった。素晴らしい。さすがはクリント・イーストウッド。
朝鮮戦争で殺す必要のない朝鮮人を殺してしまったという罪悪感に苦しみ続けている老人。度々喀血し自分の死期が近いことを自覚している。とても頑固で子供たち・孫たちとは上手くいかず、そのことにも悩んでいる。
隣にアジア系のモン族の家族が引っ越してきた。そこのおとなしい息子が同じモン族の悪い親戚達に強制されて、主人公の愛車グラン・トリノを盗みに来るが失敗する。更にその一団はその後隣家にやってきて乱暴を働くが、主人公が銃を突き付けて撃退する。また、青年の姉が街で黒人のチンピラに絡まれているところも救ってやる。こうしたことから、主人公は感謝され贈り物攻めにあうなど付き合いが始まる。そして、青年が謝罪の意味で数日間タダ働きにやってくるが、仕事を探していることを知り、建設現場に紹介してやる。
主人公は黒人に対しても黄色人種に対しても人種的偏見を持っていることを隠さない普通のアメリカ人であるが、隣家の若者には、肉親以上に親しい気持ちを持つようになる。そして、働き始めた青年が悪い親戚達からひどい仕打ちを受けたことを知った主人公は、その親戚達が住む家に行き、一人の男を叩きのめし、青年に今後手を出すなと警告する。しかし、これが逆に報復を生み、青年の家は悪い親戚たちから機関銃の乱射を受ける。青年は軽傷を負い、その場にいなかった姉はのちにひどく乱暴された姿で帰ってくる。あいつらがいる限り隣家の人たちは安心して生活できない。自分がやったことがこの事態を引き起こしたのか。青年は主人公に一緒に仕返しをしに行くよう頼みに来るが、一日策を練った主人公は、逆に青年を地下室に閉じ込め、一人で悪い親戚たちの家に出向く。相手は全員銃を向けてくるが、主人公はポケットから一本の煙草を抜き口にくわえ、続いてライターを取ると言って、左胸のポケットに入れた手をゆっくりに外に出そうとする。その時、相手は全員銃を発射する。銃弾が貫通し、主人公の体は蜂の巣のようになる。主人公は丸腰だった。相手は全員逮捕され重罪を課される。主人公は自分の命を犠牲にして隣家の人たちの安全を確保したのだ。愛車グラン・トリノは隣家の青年に遺贈される。
戦場で人を殺したことに苦しみ続けた老人が、人生の最後でイエス・キリストの唱えた無償の愛をモン族の隣人に施した。敵を愛し迫害する者のために祈ることはできなかったが。
すごいではないですか。最後の報復の仕方に唖然とした。何かスカッとした終わり方になるだろうと思っていたら、こんな結末になるとは・・・。冷静に考えてみれば、こんなこと本当にありはしないだろうと思えるが、でも、主人公の人物の造形が巧みで不自然さがない。
見終わって数分間動くことが出来なかった。主演・監督・プロデュース、すべてクリント・イーストウッド。すごすぎです。