「ミッドナイト・イン・パリ」
あまりにも取り留めがない。珍しいほどの駄作。
ファンタジーと言えばファンタジーだが、あまりにも取りとめがない。バリに盲目的にあこがれる人には、それでも、少しは訴えるものがあるのだろうか。
主人公が、突然、1920年代にタイムスリップして、本物のコール・ポーターやフィッツジェラルド、ヘミングウェイに出会いビックリする。大笑いしてしまった。確かに、こういうシーンは楽しい。そして、ピカソ、ダリ等とも出会い、ついには19世紀のベル・エポック時代にまで遡る。やりすぎでしょう。そして、昔を理想として思い描くのではなく、現在を大事に生きることこそが大事なのだという思いに至るが、でも、それって、あまりにも陳腐でしょう。そんなこと、当たり前。言われるまでもない。そんな考えが意味があるのは、昔を理想として思い描いている主人公だけ。
現実に戻った主人公はフィアンセと別れることにする。そりゃそうだよ。初めから二人は全然合っていなかった。こんな二人がなぜ婚約したのか不思議な場面しかなかった。こんなフィアンセを登場させたセッティングこそがおかしい。
amazonでのレビューを見ると、”映画に登場する有名人を知っていればすごく楽しめたかもしれない”という感想を書いている人が沢山いる。こう言ってはなんですが、映画ファンて映画以外のことは知らない人が多いのだろうか。私も決して深く知っているわけではないが、コール・ポーターの曲を聞いたことのない人はジャズファンにはいないと思うし、フィッツジェラルドやヘミングウェイの本も何冊かは読んでいる。世界の文豪だから 、好き好きだけど、ある程度は読んでいて普通かなと思う。モネやピカソ、ダリの絵も生で見る機会は何度かあった。私は特に美術愛好家ではないけど、触れる機会に恵まれている日本在住の人間としてはごく普通だと思う。写真趣味の人でマン・レイの写真を全く見たことのない人はあまりいないよな、とも思う。その程度には私もなじみはあるが、だからと言って、この映画に納得し、感動させてもらえたわけではない。
残念ながら、見たのは時間の無駄。そうとしか言いようがない。珍しいほどの駄作。