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「ミックス」

「ミックス」

”いかにもだなぁ”と思わされるベタベタなファンタジーだが、ほどほどに楽しい。本物のトップ選手が6人登場するところに最注目。

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卓球界ではちょっと話題になった作品。

長い間「暗いスポーツ」と言われ、すっかりマイナースポーツになってしまった卓球が、最近はずいぶん注目されている。それは、男子の張本智和選手や女子の伊藤美誠選手・平野美宇選手らのミドルティーン、ハイティーンの選手が世界で目覚ましい活躍をすることが報道されるようになったからである。おかげで最近は卓球を始める人が増えたと言われる。こういう映画でさらに卓球人気に弾みがつけばありがたいことだと、卓球にかかわる人は、皆思うだろう。そのせいだろうか、この映画には何人もの日本のトップ選手が、卓球選手として出演している。初めに出てきたのは吉村真晴(オリンピック団体銀メダル・世界選手権ミックスダブルス金メダル)・浜本由惟(世界選手権団体銀メダル・グランドファイナルダブルス金メダル)のペア、次いで大会前のパーティに水谷隼(オリンピック団体銀メダルシングルス銅メダル)と石川佳純(オリンピック団体銀メダル・世界選手権ミックスダブルス金メダル)。カスミン(石川佳純)は女優としても通用するのではないかと思わせるほどにカメラ映りが良い。最後に伊藤美誠(史上最年少でグランドファイナルダブルス優勝、史上最年少で世界選手権シングルスベスト8、オリンピック団体銅メダル、世界選手権団体銀メダル)と木造勇人(世界ジュニア選手権団体金メダル)のペア。

出演俳優もずいぶん奮闘している。しかし、少しでも卓球をしたことのある人なら、彼らのフォームが偽物であることは一目でわかる。また、ラリー中にパートナーに声をかける余裕があるほど卓球はスローモーな競技ではない。ラリー中のボールのスピードも中学生の試合でもこんなに遅くはないと思わせるほどゆっくりしている。

ストーリーもあり得ない話である。素人の下手くそが頑張ってインスタント・サクセスを果たすという物語は、いかにも子供じみているが、魅力的でもある。私も「チア☆ダン」や「スウィングガールズ」、「フラガール」では、図らずも涙させられた。でも、卓球は非常にテクニカルな競技である。どう頑張っても大人になってやり始めた者が、1年間の片手間の練習でトップレベルに到達するなどということはあり得ない。100%無い。この映画に出演しているトップ選手のプレーは、我々一般人からすると人間業とは思えない境地にある。彼らは2歳、3歳のころからコーチの下で毎日数時間の練習を積み重ね現在の実力を身に着けている。一般の人からすると、「天才」としか言いようのない人たちである。

卓球以外の他のスポーツについても、同様なことがいえるだろう。かつてNBAシカゴ・ブルズのマイケル・ジョーダン(「バスケットの神様」と呼ばれる。15年間の選手生活で平均得点NBA歴代1位・シーズンMVP5回・ファイナルMVP6回)が、選手生活の途中でバスケットからの引退を表明し、野球にチャレンジしたことがあった。しかし、2年を費やしてもメジャーに上がることはできず、結局NBAに戻ることになった。何によらず、スポーツには、若いときに始めないと、それに必要な能力を十分に身に着けることはできないという特性があるようだ。

こんな話をくどくどとしていると野暮としか言われないだろう。ともかく、卓球を素材として、ラブロマンスを作ってくれたことは、やはりありがたい。

私が中学生の頃は、卓球部には男子だけで30人位の部員がいた。1学年3クラスの中学校での話である。私がいた中学校が特に卓球人気が高かったわけではない。そのころは、大抵どこの中学校でも、卓球部に入る生徒が一二を争うくらい多かった。日本の卓球が世界一であった頃の余韻が、まだ生きていたのかもしれない。野球をするには金がかかるし、サッカーは不良のスポーツと見なされていたという事情もあっただろう。やがて、日本が豊かになるのと反比例するかのように卓球の人気は徐々に衰え、80年代のタモリによる「暗いスポーツ」という命名が決定打になり、地に落ちた。トップ選手の実力も世界から引き離された。そんな中、90年代に入るころ「天才卓球少女 愛ちゃん」が登場し一筋の光明を照らし、その刺激を受け愛ちゃんを目指した子たちが今10代、20代のトップ選手として、世界に伍して活躍するようになった。

この映画で展開される人間模様は、コメディーだけあって楽しい。観客を感動させようとする意図も十分に感じる。ただ、私がひねているのか、残念ながら感動はできなかった。でも、ある程度楽しい。それで十分かな。


by haru_ogawa2 | 2018-12-23 22:48 | その他 | Comments(0)

元々は自宅の回りの植物(枯れ草・枯れ葉・花・紅葉等)を撮っていましたが、今はよさこいのイベントを撮ることが多くなりました。GANREFにも投稿しています(https://ganref.jp/m/haru_ogawa/portfolios/photo_list/page:1/sort:ganref_point/direction:desc)。


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